安曇野いわさきちひろ美術館、コビトになる一日。
安曇野いわさきちひろ美術館、
開館20周年記念の特別公開に行ってきました。
空間とアートがあいまって、深呼吸したくなるような、
「自然体だけれど別世界のような場所」。ご紹介します!
※普段撮影NGの作品も、許可をいただいて撮影しています。
建築設計は、内藤廣さん。
威圧感のない、とても居心地のいい空間です。
船底天井?のカーブが、北側の山の稜線とリンクしているというのは有名な話。
その船底天井を最も楽しめるのが、
カフェからショップの方を振り返ったこのアングルだと思われます。(山は背になります)
砂の入った塗り壁の質感も素敵です。
これはトイレ壁ですが(笑)、他にも漆喰系の塗り壁や、展示室内の布張り壁など、
とにかく全体の素材感が、いいんですよね。
そんな空間に、中村好文さんの椅子。
ちょっと小さめ。
座るとなんだか小人になったような…
そんなところも世界観がすごく作り込まれています。
キッズコーナーのこの椅子「ななつなないす」は必見!
靴を脱いで上がり込みます。
座板は一枚板で、木目がつながっています。
左から、シェカーチェア・トーネット曲木椅子・中村好文「ラパン」・ジョージナカシマ「コノイドチェア」・ハンスウェグナー「Yチェア」・A.アアルト「サイドチェア」・リートフェルト「レッドアンドブルーチェア」
ですね。
ひとつだけ選ぶなら、これだな。
単体でもかわいいではありませんか!
と、なかなかちひろに到達しないちひろ美術館ですが(笑)、展示室に入りましょう!
今回の目玉は、
【開館20周年記念 Ⅰ】高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ
左:カーテンにかくれる少女 「あめのひのおるすばん」(至光社より) 1968
右:戸口に立つおにた 「おにたのぼうし」(ポプラ社より)1969
はっとする、等身大の絵の展示。
女の子が、ともに立っているような存在感です。
ピエゾグラフという、セイコーエプソンの印刷技術だとか。さすが信州。
左:海とふたりの子ども 「ぽちのきたうみ」(至光社より) 1967
右:夕焼けと少女 「ゆきのひのたんじょうび」(至光社より)1972
写真ではサイズ感が伝わりませんが、
紙の質感や、かすれなども実感をともなって迫ってくる感じ。
おおきな筆がうしろからやってきて、絵に塗り込められるような錯覚を覚えます。
これは…いいです!
この高畑さんの解説にあるように、浮世絵などもぜひ見てみたい!
ところで、いわさきちひろといえば、パステルトーンで子どもとチューリップ…
実は私、以前は「ちょっとかわいらしすぎる」というイメージを持っていました。
その考えを壊してくれたのが、
育児書のはしりと言われている、松田 道雄著「私は赤ちゃん」と「私は二歳」。
新書なのですが、その挿絵をいわさきちひろが描いています。
(うちにも本があるはずですが見つからず…。画像はこちらのブログからお借りしました。)
その線に驚きです!線で形がとらえられる人なのだと思いました。
私も落書きで子どもの形を描いてみることがありますが、非常ーーーに難しいです。
パーツは少ないし、バランスはよく分からないし。
それをこれほど捉えられている。もちろんそこには、絵の勉強をしてきた長い時間と、ボツとなったたくさんの下絵があるはずですが。その画力のベースがあってこそ、全部を説明的に描きこまないあの絵で、色々なものを伝えられるのだなあと分かるようになりました。
ちょうどこのタイミングで、Huffingtonpostで枇谷玲子さんがこんな記事を書いていました。
「私は絵で身をたてるわ」夫と子どもがいても自立を目指した1918年生まれの在宅ワーママちひろ
絵を描いていくという覚悟があってこその、この絵のクオリティ。
今回の展示には習作もたくさん展示されていて、
働く母親として、私も気が引き締まると同時に、希望も感じました。
展示室1を出て、トットちゃんの部屋を通って。
こういう素材感、今の子どもたちは感じられるチャンスがあるだろうか。
つるっとした素材にだけ囲まれて、古くなったら捨てるもの、という文化を脱したい。
私は、建築やものづくりを通して、それを伝えることもしていかなければ。
などと熱く(笑)思いつつ、もうひとつの特別展示にすすみます。
【開館20周年記念 Ⅰ】奈良美智がつくる 茂田井武展 夢の旅人
茂田井武(もたいたけし)さん。こちらは奈良美智さんのプロデュース。
ピンときたのはこちら。
茂田井武「こども」カット 1952-1956
筆で書かれたような、黒い輪郭線の絵が好きです。
画帳「Parisの破片」1930年頃-1935年頃
これは奈良さんの言葉。
描きたければ描けばいいんだという、茂田井さんのスタンス、見習いたい。
長新太さんの原画もあります。
今回は2つの特別展示があり少なめですが、あるときはいっぱいあります。
キャベツくんとぶたやまさんとか!
「ムニャムニャゆきのバス」より 長新太 1991
と、絵本カフェでおちゃなどしていたら、
また気になる椅子が。
このスツールは、豆スツールといって、
葉音さんという小淵沢の家具作家さんのもののようです。
中村好文さんとはちょっとテイストが違いますね。
外に出ます。美術館周辺の公園が、またいい。
公園自体は松川村営なのですね。
この際、美術館には入らなくても公園で一日楽しめます。
すごくいいプロポーションだなあといつも思う、この建物。
屋外トイレですが。
屋根の感じといい、全体のバランスといい、弥生時代っぽいプレーンさ。
家ってこのくらいでいいと思っています。
外壁。
また、同じ敷地にあるちひろの山荘は、
以前こちらで記事にしていますので、あわせてどうぞ。
何と奥村昭雄&まことさんの設計!
内部公開はないのかな…?ぜひ入ってみたいです。
トットちゃん電車も。
(映像室上映より)
実際のところ、「この美術館は、周囲の公園の一部にすぎない」というスタンスが、
一番素晴らしいなあ、センスあるなあと思ったり。
お弁当持っていけば、一日コビトになれる安曇野ちひろ美術館。
暖かくなったらぜひ訪れてみてくださいね!