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Landschaft

【左官の矜持】5代目まつだ左官。

公開日:2017-12-19 カテゴリー:36people, 伝統工法, 信州, 土壁 タグ:

矜持という言葉が似合う、5代目まつだ左官・松田孝司さんをご紹介します!

まずは、まつだ左官のウェブサイトから。

土蔵、土壁、土間三和(叩き)、漆喰が好きです。
伝統工法を主としたスタイルの左官工事がメインですが 現代左官工法もお受けします。
地元の土だけで家作りができます。地産地消ですね。 自然そのものを壁にすることがすきです。

松本に5代続く左官やさんです。お城や蔵をなどの修復、伝統的な左官工事はもちろんのこと、その技術を見込まれて、県外の現場に行くことも多いそう。

写真はまつださん撮影の岐阜の現場。うわ、階段の蹴込みまで左官なのですね。

土壁ワークショップを実施した三溝のカフェ・梅玄umekuroさんでは、竹小舞を編み、荒壁を塗るところからご指導いただきました。


さっさと土渡さないと怒られますよ。

 

ま、夏の足元はビーサンですけど。

 

そんなまつださんは、アウトドア派。
登山とかスキーとかスタンドアップパドルっていう立って漕ぐサーフィンみたいなのとか、キャンプのインストラクターだったりもするらしい。現場の休憩時間には、そのあたりのマシンガントークを聞くことができます。
一日お休みがあると新潟の海に行っていたり、フットワーク軽すぎ…。
そんなまつださんをみていると、仕事も生活の一部でしかないのだなと思います。全体として生きざまってもんでしょ、と松田孝司の背中が言っています。

「何で行かないの?」という一言が今の自分に刺さったりして、私にとっては、意外なヒントをくれる方でもあります。

聞けば、新島々のあたりから上高地の徳本峠へクラシックルートと呼ばれる古くからの登山道があって、松田さんのお父さんが、徳本峠小屋から霞沢岳へのルートを当時の小屋の仲間たちと開拓したんだとか。

今の車などのルートができるまでは、こちらがメインの登山道だったそうです。ちょっと行ってみたいですね。

そのまつださんは、ワルガキ三人組の父でもあります。

キャンプとか海とか、きっと自然の中に放り出されるようにして育ってきた(想像ですが多分あってる)坊主の3人組、この時代に珍しく生きのよさそうな子どもたちです。こうやって連綿と受け継がれていくのですね。

梓川のこだま食堂では、版築カウンターをつくっていただきました!


土のリアルな積層がとてもいい質感。これが今周辺で大人気となっています!松本で版築ブームが巻き起こりそうですね!

そしてしっくい壁も。

しっくい壁に少し赤味を入れて淡いサーモンピンクにしたいと相談し、「じゃあ真っ赤にすれば」と言われつつサンプルをつくってもらったプロセスがとても面白かったです。大きい面は塗ったイメージが沸きにくく、白ならまだしも、淡いサーモンピンクAと淡いサーモンピンクBを全面塗った時の違いは想像ができませんでした。最初はっきり目の色味だったのですが、もっと淡い方がいい、などのご指摘いただき、さすがのセンス、的確だ!と思った次第です。最終的な壁の色は、カウンターともに、こだま食堂に行った際にぜひチェックしてくださいね。

北杜市のキッチンオハナさんでは、ロケットストーブベンチも制作されたとか。

(写真はまつださん撮影。)こだま食堂でも、これからピザ釜製作予定。どんなものになるのか…楽しみです!

松本蔵しっく館やクラフトピクニックなどで、ワークショップもされています。


まつだのま。蔵とかに文字が書いてありますね。あれも手作業でこんなふうに描いているのだとか。かなり時間がかかるそうですよ。


磨き黒漆喰のかまど。


しっくい磨き仕上げの壁。


光の加減で色がちょっとおかしいですが、黄土大津仕上げ。そうか、大津は土なんだ、とか。改めて。


糊さしと水捏ね…左官は奥が深いですねえ。

 

最近のDIYブームで「壁ぬってみたーい!」ってみなさん軽く言います(私もだ)。でも実際のところ、10分15分はいいけれど、それ以上はコテを持つ手もコテ板を持つ手もしんどいです。それでも、塗られていく土を見ながら無為の境地に入るのは楽しい。
それを何時間も何日も何年も続けている松田さんは、ああ見えて(笑)すごい忍耐力なのだなあと思います。
使っているコテをつくってくれる鍛冶屋さんは80歳を越えているんだとか。

こちらは、梅玄さんの玄関脇。刃掛け(はっかけ)という収まりの、チリトンボ打ちをしているところ。

上の説明、専門用語満載ですね…。解説しますと、
木と左官の境目で、木の枠を見せないように薄くして、そこまで左官仕上げをするのを「刃掛け収まり」といいます。枠が見えなくなりすっきりしますが、左官の最後が薄くなるので隙間が空きやすいというデメリットがあり、それを防ぐために繊維を入れます。それがチリトンボ、というもの(クギに麻の繊維がトンボの羽のようについています)。伝統的な左官の仕事になります。

窓の向こうの大工さん・下本さんとの信頼関係も、見ていてほほえま…じゃなくて、裏ではプロ同士の矜持がせめぎあっているようでもあります。

建築というものが始まってから続いてきた左官という仕事。
プラスターボードの下地に塗り壁でももちろんいいけれど、やっぱり土壁を、これからも増やしていけるといいなと思います。それにはやっぱり体感しかないと思うので、ぜひ梅玄さんに行って五感を澄ませてみてください。深呼吸。いや、深呼吸しなくても、空気の違いはわかっていただけると思います。

松田さんは、基本的に自然素材、そしてできるだけ近くの素材を使ってつくるのが筋だろうとという方針。おかげさまで私も、梓川の砂と有明の砂の違いくらいは分かるようになりました(近くなのに、色が全然違うのが面白い!)。

最後に、まつだ語録を少し。

 

自然から得られる材料だけを使うことは、
時間もかかるし手間もかかりますが、
誰かがこれを続けなければ途絶えてしまう。
その誰かが自分であるという使命感みたいなものも、
少しはあるのかもしれません。

 

自然からいただいたものはいつか自然に還る。
土は全ての源。

5000年前から左官はいた。キトラ古墳だってそうだし、
それが4・50年でなくなるとは思わない。
長い歴史の中で、自分がぶち当たる壁は誰かが絶対ぶち当たって超えたはず。

自然での中の遊びに真剣なまつださんだからこそ、自然の偉大さや怖さを知っていて、その中で人間として生きる矜持。それがまつだ左官の仕事なのかもしれません。

そんな松田さん、左官の腕は確かですが、メールは届かないし知らない人が電話を掛けると塩対応にあいます(←経験済み)。直接連絡するのが怖い方はおつなぎいたしますのでお気軽にどうぞ!(笑)

 

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