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Landschaft

【土壁の最後の砦】小坂商会さんに潜入してきたよ!

公開日:2017-06-15 カテゴリー:36people, 伝統工法, 土壁 タグ:,


土壁の土、このあたりではベトと呼ばれますが、
それを専門で扱っているのがベト屋さん(泥コンやさんとも)。
残念ですが、土壁そのものの減少により、
ベト屋さんは、全国的にほとんどなくなってしまっているのだそうです。


そんな土壁の最後の砦とも言えるベト屋さんが、長野県に残っています。
小坂商会さん。長野市の千曲川沿いにあります。
おばちゃんがひとりでやっていて、
近ければおばちゃん自らダンプで運んでくれるらしいー
という、ウワサだけ各方面から聞いていましたが、ついに訪れるチャンスが!
松本市三溝の木組み土壁のカフェのための土を取りに行ってきました。
壁土のもらい方紹介にもなればと思います。

まず、リースやさんに行って、2トンダンプを借ります。

重機萌え。2tは中央奥、一番小さいトラックです。


ダンプのパカパカする部分は開かないよう、針金で固定するといいらしいですよ。
今度ダンプを借りる時にお試しください。


私もちょっとだけ2トンダンプデビュー。(写真は駐車場です)
後ろには停まらないでください…

とことこ行くこと1時間あまり。
着きました、小坂商会さん!

と思ったけれど、おばちゃん約束の時間になっても現れず。
基礎やさんも兼ねているので、おばちゃんは忙しいのです。

中を見せてもらうことに。

ベルトコンベアー!いきなりワクワクします!

これで下から土を持ってきます。


電気配線。


注意一秒、ケガ一生。


サイズ感が伝わらないかもしれませんが、
チェーンのコマのひとつひとつが、500円玉より大きい。


このハンドルだけ欲しい。

土木的な大きな機械ですが、手作り感があります。
工場=こうじょう、ではなく、「こうば」と呼びたいヒューマンスケール。
昭和の町工場のような、ジブリにでてくる頑固なおじさんがやってる工場(こうば)のような。
どこまでも大きく複雑になってしまった技術でなく、
牛や馬に手伝ってもらう少し先にあるくらいの、機械。
人間に見合った技術はこのくらいなのかもしれない、と思いました。

こちらは、荒壁土をつくるタンク(タンクというのか、プールというのか…用語は正確ではありません)。

そして、この回転部分。耕運機で田んぼの代かきをするためのカゴ車輪というのを、
自前で溶接したんではないか…と想像。
この赤い部分↓

違うかなあ?分かる方いたら教えてください。


黄土色の土に、ワラが入っているのが分かるでしょうか。
ちなみに土は「そのへんの山のやつ」だそうです。

こちらが、中塗り土用のタンク。


中塗り土は、砂が多めなのです。

と思っていたら、隣のタンクに、クリーム状の何かを発見!

何と、中塗り土は土を一度トロトロにして、それと砂をミックスするのだとか。
最初から全部入れてかき混ぜている訳ではないのですね!
そう言われればケーキだって混ぜる順番で全然違うものになりますもんね。

泥はねよけなのか(乾燥防止?)、ビニールが貼られた中で次の出番を待っている、トロトロクリームさんです。

素材も、すべて素性の分かるもの。

砂です。


わらです。

中がどうなっているのか分からないブラックボックスばかりの現代において、
中身まで、ただただほんとうの素材だけでできている土壁。
そしてそこには、混ぜ方や寝かせる期間を熟知するべと屋さん、
それを扱う左官屋さんの知恵や思いも込められています。

わらも、こんな風に積んであるところから、

このフォークでカゴに入れて、手で混ぜてるんだなあと。

土に混じっている石も、手作業でこの使い込んだバケツにひとつひとつ弾いていくんだなあと。

油さしも。

窓に飛んだ土も。

必然から生まれたアートのようで、しばしうっとり。

あ、おばちゃん来た来た!

もう練って準備してある荒壁土を出してくれます。

何でトラックに乗せるかというと…これ!
ホイールローダーです。
ついなんでもショベルカーと言ってしまってはいけません。

ホイールローダーで公道走行する際は小型または大型特殊免許が必要で、
作業を行う場合は車両系建設機械運転技能講習を受けなければならない。

という乗りものです。
そのホイールローダーに、自転車にのるくらいの感じで乗り込むおばちゃん。

おばちゃんおばちゃん言ってますが、正子さんです。
顔写真は撮り損ね、これが一番寄った写真です。
さすが外仕事のプロ、目元しか出ない完ぺきな手ぬぐいワークで顔が覆われ、
その手ぬぐいを取って写真を撮らせてくれとは言えませんでした。
でも、お肌つるつるのかわいいおばちゃ…正子さんでした。

弟さんが亡くなられたあと、「おばあちゃん」が一人でやっていて
後継者がいない…(他の業務はしてくださるかたがいるようでした)
というような話を聞いていたので、もっとご高齢の方かと思っていましたが、
全然ぴちぴちでした、正子さん。

以前、小坂商会さんに電話してみたことがあります。
自分でこねてみたいので、粘土だけ買わせてもらうことはできるか聞いたところ、
「自分で練るのはみんなやりたいというけど後で手に負えないと言ってくるよ」
「そんなら粘土をちょっと持っていって、やってみたらいい」
と、なんとも言えないやわらかい語り口で話をしてくれ、
そんな、おばちゃん…一度も会ったことのない私に(涙)。
と思ったものです。

最近はセルフリノベをする人が時々取りにくるとか。
そんな人たちにも、きっとやさしく色々教えてくれると思います。
機械が凍みちゃうから、冬は出荷できないそう。(12月からお休みで、4月ころ再開)
覚えておくといいですよ!

土壁は結構出ますか?と聞くと、
「全然でないよお~」とのこと。
これから松本平でも土壁の家増やして、たくさん取りに来ますから!と言うと、
「どんどんそうしてよ~ おばちゃん死ぬまでがんばるからね!」

みんなで、おばちゃんのところにじゃんじゃん土を取りに行きましょう!

冷たい缶コーヒーをもらって(私はコーヒー飲めないですが)帰途につき、
現場につくっておいたフネに、土をどさーーー


青緑っぽくなっているのは発酵が進んでいるところ。


ちょっと独特の香りがしますが、
天然酵母などを扱うお施主さんRさんは全く気にならないとか。
さすが自然素材を知る人です。

 


ダンプさんも洗われて、お帰りになりました。

これでだれでも小坂商会さんに土を取りに行けますね!
かわいいおばちゃんが手作業でつくった土(ワイルドですが)、
もっともっと広がるといいなと思っています。

興味のある方はぜひ土壁ワークショップにお越しくださいね!

 

 

 

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