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【伝統構法】しももと建築施工例をゆく!【松本】

公開日:2018-02-15 カテゴリー:36people, 伝統工法, 信州 タグ:

三溝の梅玄さんの土壁ワークショップはじめ、色々お世話になっているしももと建築さん。
施工例を見せていただいた時のレポートをお届けします!

まずは、松本市の新築物件。ご夫婦でお住まいの、木組み土壁の家です。

現在一般的な「在来工法」は、金物と筋交い・面材を使って、固く作るのですが、「伝統構法」は金物にできるだけ頼らず、木の特性を活かした柔らかさのあるつくり方です(もちろん現行法規にも適合しています)。
「伝統構法」と一口に言っても色々なスタイルがありまして、しももと建築さんのものは「民家型構法」をベースとしたつくり方。「民家型構法」は、現代計画研究所の藤本昌也さんが中心となって80年代に提案された構法で、木を生かす軸組と地域材の利用、フレキシブルな空間といった特徴を持っています。ご本によれば、民家型構法は「大地性の復権」に向かっていくものなのだとか。バブル期にそういったことまで見越していた先見の明に驚きますが、逆に今の時代にはしっくりくる考え方になってきているように思います。

なにはともあれ、軸組がかっこいいのです!

プラスターボードで全面覆ってしまうデザイナーズハウスなどは、見えている空間はスタイリッシュかもしれないけれど、見えない部分はブラックボックスで、何でも隠せてしまう。
その点骨格がすべて見えている形では、逃げようがありません。その骨格が美しいということは、住まいとしての本質的な軸のようなものがある、ということだと思います。こんな美しさに気づく人を、もっと増やしたい。

中に入れていただき、ご挨拶もそこそこに、これはヒノキ?あれは?と聞いていたら、

「あら、わたしもメモしておこうかしら」と書き留める奥様。かわいらしい。

一階居間の床はカラマツ。

デッキはヒノキ。

お庭も素敵ですね。

軸組のスギは、高知県の嶺北(れいほく)地方のもの、主に80年生以上のものを使っているのだそう。そうでした、実は高知男子のしももとさんです。いごっそう、というんでしたっけ。
また、一部の床材のアカマツは、震災支援ボランティアでも関係した大船渡の業者さんから買ったものなのだとか。

下の写真は、2階の中塗り仕上げの壁。

1階の壁は、土佐漆喰(とさしっくい)の半田(はんだ)仕上げ。ノリを含まないため、一般的な漆喰より強度の出る「土佐漆喰」に、半分土を混ぜた(だから半田、なのですね)「ハンダ仕上げ」。しももとさん一押しの壁仕上げです。ちょっとよい写真がとれませんでしたが、少しい黄色みのある色で、だんだんと白くなっていくのだとか。

2階はロフト風の一室と収納になっています。

一階を覗く窓。木材の無駄を出さないことも当然のように考慮された、絶妙な高さ関係です。

関係ないですが、星丸くん。

一緒にお邪魔したこだま食堂サニーさんと、小屋も興味津々見せていただきました。

ちなみに母屋の外壁はカラマツです。軒下空間も素敵ですね。

何より、大切にお住まいになっていることがすごく感じられるご夫婦でした。
ありがとうございました!

続いては、朝日村の改修物件。
外観の写真が出てこない…のですが、かなりの古民家です。玄関先にも味がありますね。

旅館の仲居さんをしていたことがあるという住まい手さんが、びしっと手を入れてお住まいになっています。

お子さんのミニカーの展示場になっている格子の部分は、耐震補強です。格子でも、基準法上有効な耐震壁です(例えば見付け4.5cm×厚さ9.0cmで9-16cmのピッチで入れれば壁倍率0.9倍)。土壁も最大1.5倍とカウントできますし、合板と筋交いだけでない耐震のとり方がもう少し一般的になるといいのになあと思います。格子で向こうが見えますし、デザイン的にも有効に使えますね。

以前にも改修の手が入ったことがあるそうで、そのとき入れられた「あまり効いていると思えない」すじかいが残っていますが、しももとさんによるものではありません、念のため。

ストーブはイエルカさん。この大きさなら、暖かく過ごせそうですね!

お子さんもいるのに、アカマツの床もぴっかぴか。

「しももとさんにはあんまりするなと言われたけど、水拭きもしてます!」とのこと。

少し前に亡くなられたねこさんの、思い出の爪あと。

お子さんがいるのに、ほんとうにすっきり。掃除が趣味なのだとか。そうか、コドモがいるとかは言い訳にすぎないのですね、ごめんなさい(←自分)。

一定以上の古いおうちはきちんと手を入れてあげないと、古さに人のほうがめげてしまったりしますが、こちらは凛とした佇まい。
建築に関わるものとして投げやりに聞こえてしまうかもしれませんが、住まいって、結局は住む人のくらし方やセンス次第かも、と思うことがあります。だからこそ、そのセンスを育む気づきのきっかけをつくっていかねば、と思ったりもします。

さて本日最後は、朝日村の、かの有名なおそばやさん、ふじもりさんです。


馴染みすぎていて、床の張替え程度の改修に感じますが、柱以外はほぼスケルトンにした、大掛かりな改修工事です。

壁も、まつだ左官の松田さんが新規に塗ったもの。

まだ数年なのに、風の当たり具合などで、すっかりなじんだこんな色になったのだとか!自然素材の面白さですね。

床はアカマツ、ふじもりさんちのYさんが時々オイルで磨いている努力のたまもの。

ちなみにオサレなかごバックはサニーさんのです。

松田さんの秘密の配合の、薪ストーブの蓄熱壁もすごく魅力的な質感ですのでお見逃しなく。

建具は、はすみ工房の荷見さん。

ふじもりさんのYさんがヤフオクで買い揃えた建具を、縦横あれこれ調整していれたものなんだとか!

そしておそば!こちらは説明不要ですね。

玄関前の、このしつらえ。やっぱり住む人のセンスが大切なのは間違いないかと。でも、センスはきっと育つはず!

ふじもりさんのお客さんが「ここの改修を手がけた大工さん教えてください!」と相談して、しももとさんに依頼があることも多いのだとか。見る目ありますねー!

 

その他、しももとさんのご自宅にも伺ったことがあるのですが、初対面で遠慮していたため写真なし。築10年近くになるのに、なんと室内の壁がまだ荒壁のまま!というワイルド仕様です。でもかわいい奥様とかわいい猫チームさんがお住まいです。

そして、松本市三溝の梅玄(umekuro)さんが最新のお仕事。小さい店舗の新築物件になります。

(パソコンが変わって完成後の写真が出てきません…)これは竹小舞を編んだときの「竹かご」写真。土壁ワークショップで荒壁を塗り、内壁の仕上げは松田さん。店主Rさんコダワリの麻が入った壁です(見ても分からないですがぜひ話を振ってみてください)。こちらもチェックしに行ってくださいね。現在のところ平日の営業、ランチは予約したほうが◎です。

林学系の大学院を卒業された後、林業の実務を経て、伝統構法の工務店で修行されたしももとさん。自分から声高にお仕事をアピールされたりはしませんが、木への深い造詣と愛で、人一倍丁寧なお仕事をされます。その昔は、山に入って鷲の数を数えていたとか、こんにゃくがつくれるとか、縄もなえるとか、自宅のお風呂は五右衛門風呂だとか…。芯になっているのは、手仕事への確かな実感と、自然への畏怖のようなもの、なのかもしれません。

そして、100年後の古民家を、100年後の古材を、今日もつくっているのでしょう。

 

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