木だって「低温殺菌牛乳」がおいしい。【乾燥について】
木材を使うなら無垢材がいい、という方は増えてきていると感じます。大量生産工業製品のフローリングと比べれば、隙間やねじれが出ることもありますが、それも生きものらしい、と思ってもらえるようになってきたのだと、思いたい。
そんな方に、ぜひもう一つ知っていただきたいコダワリポイントがあります。
それは「乾燥の方法」です。
木は切ったときは、切り口から水がしたたるくらい、水を含んでいます。
それを材木として使うためには、乾燥させる必要があります。
主流なのが、高温乾燥といって、120℃くらいで乾燥させるもの。
もう一つが、もう少し低い中低温で乾かすものです。(天然乾燥など他にもありますが、それはまた後日)
その違いは、ひだまりミュゼ高井さんの言葉を借りれば、
「低温殺菌牛乳と高温殺菌牛乳の違いのようなもの。」
牛乳の違いが分かる方には、もうこれ以上説明がいらないかと。
高温なら数秒で殺菌は完了するが、低温だと数分かかる。でも低温の方が牛乳本来の味が残っていますよね。
木材の乾燥においても、一緒です。
一つめの高温乾燥では、短時間で乾燥が終了します。でも、一気に繊維の老化が進んでしまうのだとか。木の細胞が壊れてしまい、木の精油成分も抜けてしまう。表面には割れが入らない、表面に焼き目を付けたカツオのタタキみたいな乾燥の方法もあります。
2つめの中低温乾燥は、厳密には低温乾燥(35~70℃)または中温乾燥(80℃前後)という区分はありますが、80℃くらいが生きものとしてのギリギリのラインなのだとか。細胞が壊れず、精油成分も残るため、時間を経てつやが出てきたり、構造材ではより長く強度を保つことができます。もちろん、乾燥に時間が掛かる、マツ系の樹種ではヤニが出る、などのデメリットもありますが、その成分が残っていることの証しともいえるのではないでしょうか。
実は私、新築の無垢のフローリングが、数年経つと黄色っぽく変色するのが気になっていました。なんで古民家のような色とつやにならないんだろう…と。昔はよく磨いたから?と思っていましたが(それもあるかも)、どうやらそれは、乾燥方法に違いがあったようです。120℃を超える高温乾燥では、一瞬にして水分を抜き取ってしまうので、黄変(黄色く変色する)が起こりやすいのだそうです。
カリっと香ばしく焼き上げたみたいなものでしょうか。
(今回は珍しくフリー画像使用させていただきました)
牛乳も、残念ながら高温殺菌が流通のメイン。
でも効率化して切り捨ててしまった部分に、ほんとうの良さがあるのかも。
材木も、流通のメインは高温乾燥なので、中低温乾燥の木材をぱっと買おうとするのは難しいですが、どこかで木を買うチャンスがあった時に、「低温乾燥の材はありますか?」とつぶやく人が増えたら、きっと何かが変わっていくのではないかと思うのです。
今回こだま食堂さんのワークショップで使うフローリングは、長野県産アカマツの、中温乾燥のもの。
ご用意くださったのは、松本市の製材所、赤羽工業さん。見学させていただいてきました!
いーい感じの看板ですねえ。
その日はシラカバ(ダケカンバ)の製材をされていました。
シラカバ…と言うと、直径10センチくらいの華奢な樹木をイメージしますが、これです!でか!
東北の方の材だとか。シラカバは、先駆樹種といって、伐採などで裸になったような土地に、最初に生えてくる樹種なのだそう。樹木としてきれいで観光の目玉にはなるんだけど、細いうちは材として使いにくいとか。でも、ここまで育つと家具などにも活用ができるようです。シラカバの皮を燃やすという信州の?お盆の?なぞの風習に使われるような樹皮がくるっくるでかわいい。
そのくるっくる付きのシラカバさんを、社長さんがチェーンソーで玉切りにしていました。(玉切りとは、立木の伐倒後に決めた長さに切断することです。)
フォークリフトも手足のように活用。
松本民芸家具さんから、職人さんがいらして一緒に製材されていました。
丸太から板を取るのは、ただ縦に切ればいい訳ではなくて、どのあたりを切ったらどんな風な木目が出るか…などを、丸太の状態を見て判断する必要があり、かなり高度な目利きが必要です。それで材としての価値が天と地ほど変わったりします。
マグロを一本買いする仲買人さんが、しっぽの断面で中の様子を判断するのに似てるかも。
若い職人さんもいて、こうして見て学ぶのですね。
個人的には、連動して動くアーム萌え。笑
材の上に謎の暗号が。なんですか、これ?
長さ2.1メートルで、巾29センチ。厚みが1・6寸(約5センチ)という表記だそうです。
た、単位がバラバラじゃないか!とか、素人のつぶやきはさて置いて…。
乾燥機も見せていただきました。
低温から高温まで調整できるものだとか。
息子さんで常務さんの洋紀さんがご案内くださいました。ありがとうございます!
センスのいいウェブサイトも洋紀さん作なんだそう。
某モールにあったヒマラヤスギさんも、材になって次の出番をお待ちになっていました。
そこには大きな資本のショッピングモールがまもなく開業するのですが、こういった、その場所にあった木々のストーリーも、色々な形で引き継がれていくといいですよね。
また、パレットの切れ端の国産ヒノキ材がたくさん出るのだそう。
「いい使いみちないですかね~」とのこと。
35~40センチ弱までの板材。確かにもったいない!
ハコをつくるワークショップとか?できそうですね~。ハコつくりまくりですね。
いい使い方を思いついた方はぜひご一緒に何かつくりましょう!
広葉樹を製材していると、薪ストーブを使う人が「いい端材出た~?」とやってきたりもするそうです。松本の街なかにほど近いこともあり、きっと地域のみなさんに愛されている製材所さんなのだろうな、と感じました。
今回のワークショップで使うフローリングのサンプルがこちら。(ちょっと暗いところで撮ったので色が暗いですが)
柾目(まさめ、木目がほぼ平行に並んでいる)のきれいな材です。ちょっときれいすぎかと思えるほど。職人さんによっては節がある方が強度があるという方もいますが、節ありをセンス良く貼るのは至難の業。今回はきれいな材をいれていただけるので、施工の多少のアラは目をつぶって…いただけますか、施主のサニーさん!笑
でもそこにはワークショップ参加者さんたちの愛と汗が染み込む予定ですので…プライスレス!
そんなこんなで、ワークショップは残席1となっております。※ワークショップは終了しています。
(お子さん連れで来たいというお声もあったのですが、今回電動工具が結構ワイルドですので残念ながら難しく…コドモ参加型ワークショップも開催できるようにがんばりますね!)
ぜひご一緒くださいねー!
いいおうちが仕上がるのですねえ〜〜〜!こうした、ひとびとの寄り合いでの仕あがり、、、。かつてのこの国にあつたなりわいごと、、、合掌こんしん
樹皮の感じがウダイカンバっぽく見える。
杉の造林地に侵入して勝手に育っちゃう。
でも、家具材に使えるから、まっいいか、いう感じの木です。