コドモがコテっと寝る、照明学的3つのステップ。
コドモは早く寝たほうが、寝る子は育つし、大人はラク(←ここ重要)。分かってはいるけれど、「早く寝ろ光線」を出せば出すほどコドモって寝ないですよね。もう夜10時になるのにふとんの上で飛び回るコドモたち。大人は「早く寝なさい!」といいながらイライラ。疲れた一日の最後に、何でこんなバトルが……と日々思っている方も多いのではないでしょうか。
建築士目線で考えると、「寝かしつけは、夕暮れを再現する」ことで、成功率がぐっと高まります。照明の最新知見に裏づけされた、寝かしつけが驚くほど楽になる簡単な3つのステップ、ぜひお試しください!
ヒントは照明の知識にありました。少しご紹介します。
照明には、主な二つの要素があります。「照度」と「色温度」です。照度は一般的にいう明るさのこと。色温度は色味のことで、夕焼けの赤い色から→黄色→白→青白い色までのグラデーションになっています。赤寄りだと落ち着き、青寄りだと活気が出るというのは、夕暮れと日中の光をイメージすれば、何となく納得がいきますね。さらに「夜間の明るい光は、健全な睡眠を邪魔する」ということが、実は研究により解明されています*。以下にポイントをまとめてみました:
■就寝には「メラトニン」というホルモンが必要だが、青白い照明は「メラトニン」の生成を邪魔する。
■就寝には体温低下が必要だが、青白い照明は、電球色に比べて体温が低下しにくい。
■コドモは、青い光に対する感受性が大人よりも高い。
■電球色のLEDでも、就寝前半1/4における深い睡眠状態が有意に少なくなる。
つまり、青白い光やLEDの光は体を目覚めさせる力があり、特にコドモは寝つきにくくなる、ということなのですね。天井の真ん中に煌々と着いている青白い照明を消した瞬間「早く寝なさい!」というのは、生理的に難しいことだったんです。寝ないのは、あなたのコドモが悪いのではなく、あの照明が悪かったんです!
では、【寝る前の具体的な3つのステップ】をお教えします!
①まず、天井照明が昼白色の(青白い)おうちは、電球色のものに変更して、夕方以降は電球色で過ごします。この段階では電球色のLEDもギリギリ許容範囲。加えて、TVやスマホは強烈なブルーライト源なので、これで体が目覚めてしまっているコドモも多いはず。夜は見ない・使わないか、可能な限り早い終了時間を決めましょう(大人もね)。
②入浴後は、天井照明を付けずに、部屋の隅に置いたスタンドライトにします。天井照明より部屋の明るさを一段落とすことができます。できれば白熱灯がよいですが電球色の蛍光灯も可。LEDは避けましょう。部屋に陰影ができて、いつもの部屋でないようなゆったりした雰囲気になります。コドモは大人の心の焦りも敏感に察知するから、この段階では大人もくつろいだ気分になっていたいところです。
余談ですが、そもそも日本の照明は明るすぎるし、白い明かりって高度成長期みたいですよね。ヨーロッパなどでは温かみのある電球色のライトやキャンドルで夜を過ごしていて、豊かだなあと思わされます。そんな夜を過ごしたいものです。
③最後に、いよいよ寝室に移動です。寝室でも天井照明は付けずにすむように、枕元のライトを導入しましょう。手元のスイッチでぱっちんと消せるようなもの。ギリギリ絵本が読める明るさがあればよいので、20W程度か調光機能付きのものにします。ここでは多少の電気代は目をつぶって、白熱灯を選びます。そして、寝る前の儀式のように絵本を数冊よめば、あとは枕元の明かりをぱちんと消すだけ。ここで消灯に文句を言わなければ、2・3分後には規則正しい寝息が聞こえてくることでしょう。
結論としては、寝る前の照明は「夕暮れを再現=段階的に暗くする」ことがポイント! 青白い光を排除して、段階的に暗くしていき、自然の摂理として眠くなる環境をつくることが大切です。
この方法で、我が家は0歳児の夜泣き期以降は、寝かしつけに困ったことがありません。唯一のデメリットとしては、寝かしつける大人も眠くなるということでしょうか……。ま、暗くなって眠くなるのは生き物としては自然な姿ですよね。あれこれ後回しにして大人も寝てしまいましょう。
寝かしつけに苦労している大人のみなさん、ぜひ試してみてくださいね!
*参考文献: 時間生物学vol.17-1/ヒトの社会生活における光環境と生物時計について―工学および文化的考察―』 小山恵美 (京都工芸繊維大学准教授)