【口語訳】松枯れ・ブルーステインって何?
長野県にいるとよく聞く「松枯れ」と「ブルーステイン」。虫が入ってマツが枯れるらしい?というところから一歩踏み込んだところを、山仕事創造舎の香山由人さんに教えてもらいました。私なりに噛み砕いて解説してみたいと思います!
まず、松枯れの主な原因といわれる、センチュウによる松枯れについて!
センチュウによる松枯れは、以下のようなステップで起こります。
【1・センチュウによる松枯れ】
①体長一ミリの線虫「マツノザイセンチュウ」が、明治時代ころ外国からやってきた。
②日本で「マツノマダラカミキリ」に出会い、寄生して一緒に移動するようになった。
③センチュウさんは、カミキリムシが枝をかじる時に気門(呼吸する穴)からが出てきて、枝のかみ傷からマツの中に入る。
④マツの中にセンチュウが入ると、以下のように一ヶ月で枯れてしまう。
1-2週間後に幹の中で気体が発生し、樹液の上昇が妨げられる
↓
水が吸い上げられないので、樹木内部が乾燥し、枝葉の細胞が枯死する
↓
1ヶ月ほどで枯れる
(神戸大学 黒田慶子先生の資料より)
センチュウはカミキリムシの体内に入ったことで自由に移動できるようになり、カミキリムシはセンチュウが木が枯らせると卵を産むことができる、という「win-winの関係」で日本中に広がってしまった、というのが「材線虫病」という伝染病なのですね。
これが松枯れの主要な原因と言われています。
【2・松枯れには他にも原因がある】
ですが、松が枯れる原因としては、材線虫病だけではなく様々なものがあります。焚き火をすると広がると言われる、ツチクラゲや、ナラタケ(※おいしい)なども松を枯らします。どちらも土壌伝染病です。
ツチクラゲ
ナラタケ
(上記2枚の写真はこちらからお借りしました)
【3・松枯れが止まらない理由】
昔は、このような様々な原因でマツが枯れることがあっても、搬出して活用していたため、伝染病などをある程度抑制できていました。しかし、1970年代ころから日本人の生活が変化し、枯れ木を放置することになり、松枯れの拡大が止まらなくなってしまった、というのが現状です。
またアカマツは、植生遷移において「先駆的樹種」つまり森の早い段階で生えてきて次につないで行く役割で、遅かれ早かれ枯れていく定めだという考え方もあります。防除としての空中散布などの問題もありますが、そちらはまた別項に。
【4.ブルーステイン】
アカマツ材の一部が青く変色するブルーステイン。これは青変菌という菌による変色です。でも、青変菌が原因、ということだけは確かだけれど、どのようなメカニズムで青変菌が入るのかははっきりとは分かっていません。
確かに枯れた松の材には青変菌が入るのですが、木が生きていても弱ってくると青変菌が入り始めることもあります。また健全な木でも、時期によっては伐採すると青変菌が入ります。製材してから管理が悪いと入ることもあるとか。
つまり「青変菌とマツが枯れる事には直接の因果関係はない」というのが現段階での正しい理解であるようです。
(逆に、「青変菌はマツノザイセンチュウの餌となる」との記載がある論文もある)
ともあれ、青変菌が入った材は見た目は変色しますが強度や組成には変化がありません。そこからカビなどが生えることもなく、人体への影響もないそうです。木材業界では長年、この青模様を「
ソマミチのイベントでつくったキバコ。青い部分が分かるでしょうか。
こちらもイベントで敷いたフローリング材。少しラフめのインテリアなどに合わせたらかっこよく仕上がりそうです。
【5.腐朽菌】
青変菌と混同しがちな「腐朽菌」もあわせて見てみます。こちらも、腐朽菌が松を枯らすのではなく、枯れた松に腐朽
【6.まとめ】
まとめると、松枯れは原因もひとつではないし、今後の方策も万能な単一の答えがある訳ではない、といえそうです。
木が弱ってくるとセンチュウや菌にやられるのか、菌が木を弱らせるのか、どちらかが原因でどちらかが結果といった分かりやすいフローでは
でも、ひとつ言えることは、木使わないことで、山の状況は悪化している、ということ。
だから、使いましょう、近くの木を!