【Neighborwood】100年のヒノキを切りに行く【#002伐採編】
Neighborwoodプロジェクト、伐採編です!(下見編はこちら)
荒山林業さんの山に伺ったのは、12月の第二日曜日。前日に雪が降ってどうなることかと思いましたが、当日は寒いけれど快晴!雪の積もった林道は、うちの2WD車(次は4WDにします…)では登りきれず、途中に乗り捨て荒山さんに同乗させていただき、なんとか現場へ到着。
最初からどうなることかと思いました…。
今日切らせてもらうのは、この方。
大正時代から生きている木を、今日切らせてもらうんだなあと。
さっそく伐採…の前に、ざっくりおさらいをしておきます。(画像はこちらからお借りしました)
最初に倒したい方向に受口(うけくち)をつくり、次に反対側の追口(おいくち)を切っていき、伐倒します。受口と追い口の間にツルという部分を残すことで、そこが蝶つがいのような役割を果たし、安全に倒すことができます。
準備する香山さん・荒山さんを見つめる二人組。
今日は、斧とノコギリで切っていきます。チェーンソーなし伐倒です。
一番左は、窓鋸(まどのこ)といって、木屑を詰まりにくくする深い溝が入っているノコギリ。斧は、小さいものは伐倒用ではないけれど、コドモ用にと用意してくださいました。
さあ、それでは、お神酒を捧げて、柏手を打って。
オット氏、第一投!
私も斧を入れます。
ここにきて、お子らがまさかの「やらない」…!
家では「きこりさんと木きるー!」「ここに(腰に)どうぐをいっぱいぶらさげて、木にのぼる!(それはイベントで見た特殊伐採ですが…)」など、かなり盛り上がっていたのですが、寒いせいか、大人の緊張感を感じ取ったのか、何だかもじもじする2人。
しかたがないので、オットと私で交代しながら斧を入れました。
コーン、コーンと木を打つ音が、いい音。
周りの山なのか、木々になのか、反響してすごく澄んだいい音がします。山に、人が入って、何かいただいてくるって、このくらいの力関係なんじゃないのかな、と思ったり。
と、そんなことを言っていますが、斧を入れる位置も定まらず。なかなか進みません。汗かいてきました。
何とか、大きさ的には大体できたところで、香山さん・荒山さんにバトンタッチ。
伐倒方向を確認しながら、私たちが切った受け口を修正してくださいます。写真で見ると、かなり斜めですね…すみません。
荒山さんが、芯を抜いているところ。つながったままだと倒れた時に割れてしまうことがあるのだそう。
そういえばチェーンソーでも、真ん中に刃をずぼっと入れてますね。
直角が測れるさしがねのような道具も(名前不明…)。
やっと近づいてきた男子、この道具が気になり、さっと手を出すも…
香山さんに取り上げられる(すみません…)。
そして、受口完成です!
切らなかった人も、「きーさんのくちだ」と木くずをパタパタ。
ひのきの香りがします。
受口のあとは、追口側を切っていきます。
その前に、ツルの部分の表面を落としておきます。これも倒れるときの割れを防ぐため。
追い口をノコギリで切りはじめ、くさびを入れていきます。
プロのお二人が手際よく進めてくださいますが、それでもチェーンソーとは比べ物にならないくらい時間がかかります。香山さんも「一年に一回くらいは、我々もチェーンソー使わずにやってみた方がいいね」とおっしゃったり。
ここでついにムスメ登場。
窓鋸の刃は軟らかくて、水平に動かさないとたわんでしまって動かせません。
切れてるのか分かりませんが…。ま、何事もやってみるのが大事ということで。
ところがこのひのきさん、重心が谷側(倒したい方向と逆)にあるようで、クサビをたくさん入れても、なかなか動いてきません。ツルぎりぎり近くまではのこぎりで切り進んだので、もうほとんど切れているはずなのに。かといって後ろに倒れるわけでもないのですね。重心の関係だと思うのですが、見ているとなんだか不思議。
安全クサビ。これはチェーンソー用で、手ノコの狭い隙間にはちょっと入れにくそう。
結局、ロープを掛けて引っ張ることになりました。
枝でつついて、ロープを上に上げる三人。
荒山さんが向こうで引っ張っています。それを見たムスメ「たおれたら、あの人あぶない。」。
うわー、このくらいまで倒れてきた!…というところで!!
掛かり木になってしまいました。「掛かり木」とは、伐採している木が倒れずに隣の木などに引っ掛ってしまうこと。角度が10度くらいまでの間にひっかかると掛かり木になりやすいのだそう。ヒノキは枝も粘りがあるので、掛かりやすいのだとか(スギだともう少し折れて倒れてくる)。なかなか粘り強い木です。
枝先が動いたので、樹冠に積もっていた雪がはらはらと落ちてきました。(※木の真下にいるわけではありません)
一度ロープをゆるめて、少し引っ張る方向を変えます。
もう根元は浮いているようにしか見えないので、見ているこちらはドキドキします。
ロープが再度引っ張られ、…倒れました!!
別途動画をアップします。
倒れたー!
と、匂いをかぐ人。ちょっとどいてくれる?
山側の方にアテがあります。まだ若木だった30年くらいの間に雪か何かの影響で山側に倒され、それをアテで支えて戻してきて、その後比較的まっすぐ育ってきたけれど、間伐が遅れ気味だったのか後半の目はすごく詰まっている、という人生(木生?)を歩んでこられたようです。
数えると、101年ありました。
寝転がるひと。
一本橋わたれ~をする人。
材を計測します。
一般的には、山側の方がこれは4m、などと決めて玉切りにしますが、今回は設計に基づきどのくらいの長さで切るかを決めることができるという恵まれた状況です。ですが、実はまだ場所も設計も白紙。これからどうなるのか、乞うご期待(←自分に)。
こんな風に、山を基準に考えるという作りかたがあってもいいですよね。いや、きっと昔はそれが当たり前だったはず。
2m60くらいのところまで曲りあり。
そこまでを板材にしてしまうか、曲がりを活かして梁にするか…。こんな楽しい悩み、いいんでしょうか。
空を見上げると、このヒノキさんが占めていた分の空がぽっかりと。
午前中丸々かけて、一本切ることができました。
香山さんも「こんなに一本の木を味わうこともなかなかないね」と。
ありがとうございました!
こちらの人は倒れた直後に「もういっぽんきりたいなー」とのたまう。やりたい気持ちはあったようです。10年後、この記事をみて後悔するがよい。
このヒノキさんは、春まで葉をつけたままの「葉枯らし乾燥」にしておいて、その後搬出します。「葉枯らし乾燥」とは、伐倒した木の枝葉を付けたまま伐採地に一定期間置いておき、葉から水分が蒸散していくことで予備乾燥させることです。
葉枯らし乾燥は、古くから各林業地で行われてきましたが、その主な目的は材の乾燥により重量を減らして集運材作業の負担を軽減させることにありました。近年は、それだけでなく、材色・艶の向上、含水率低下による収縮、割れ等の欠点の減少等さまざまな葉枯らしによる効果が見直されてきています。 (こちらより)
スギの方が水分が抜けやすく葉枯らし乾燥に向いているとか。
また、新月に向かう時期だったので、一応新月伐採ということにもなっています。新月伐採とは、水分の少ない新月期に伐採をすることです。スピリチュアルなまでに腐らない!などという方もいますが、どうなのでしょうね。
どちらにせよ、私たちにとってはとても特別な木になったことは間違いありません。お子らによって、「ひのきのひーさん」と命名されました(笑)。
木くずをもらってかえってきて、ひのき風呂。
「うくのとしずむのがある」というムスメの観察により分類してみたところ、辺材とよばれる木の外側に近い部分が沈み、赤身とよばれる芯材が浮いているよう。芯材は吸水しにくいから浮く、つまり水に強いんだな、というのを身をもって実感。そして香りは芯材の方が強い、ということが分かりました。
この方、二日後の起きぬけにつぶやきました。
「きーきったの、おもしろかった。ざざざー、ばったーんって。」