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Landschaft

ゾウに追われて気がついた、住まいの基本。2/2

公開日:2018-11-12 カテゴリー:principle タグ:

前回はアフリカでゾウに追いかけられたという持ちネタ(笑)のようなものですが、
話には続きがあるのでした。

 

その日の夜に、今度は泊まっているロッジの前に、再びゾウが現れたのです。数本の木々の間からガサ、バキと音がして、また大きなゾウが、わし、わしと姿を見せました。建物に電気はきておらずロウソクだけなので、月明かりがあったのでしょう、暖炉のあるリビングの前の大きな窓から、そのシルエットがよく分かりました。

室内から、窓越しに見るゾウは…あ、怖くない!

そして私は思いました。

家ってすごい…!

それが明確に建築を意識した第一歩だったように思います。
(どんなきっかけなんだ、という話ですが…。)

 

人間は、とにかく非力な存在(それゆえ余計なことまでするようになってしまったけれど)。圧倒的な自然の中で、生きていくにはまず自分たちを守らなければならない。まずは守るという基本性能を持っていること。シェルターであること。それが住まいの基本なのだと思うのです。

守るすまいというと、アフリカの地方の小さな集落を思い出します。アフリカの集落の住まいは、日干しレンガに草の屋根。日干しレンガとは、土を型にいれてレンガの形にして天日で乾かしたものです。壁は、日干しレンガを積んで、そのまわりに土を塗ってつくります。屋根は、細い丸太を組んで、その上に草が葺いてあります。木は貴重なので、ほぼ土の家です。

バスから撮ったピンボケ写真しかありませんでしたが、こんな感じ。

赤い土の上に、こんな家が数軒集まって建っている程度の集落です。そのへんにニワトリが歩き回り、おばちゃんが家の前の地面に座ってお茶をしたりしている。子供たちは外国人が珍しく集まってくる。

写真は別のときのですが、だいたいこんな感じ。

子どもらがふざけて逃げるので、鬼ごっこ的に追いかけたり。iwe(いうぇ=hey,you!みたいな感じ)とか言いながら、追いかける。

一人の子供が家に逃げ込んだので続いて入ってみると、一瞬目がくらみました。家の中が、真っ暗なのです。電気は当然なし。

レンガ2個分くらいの小さな窓は開いていて、次第に目が慣れてきました。床がそのまま立ち上がって壁になっていて、床は地面。そこにチテンジという布を敷いて眠るのです。無いからかわいそう、という話ではなくて、ああ、このくらいが人間という生き物の巣の原点なのだろうと思えたのでした。

すまいは、シェルター。

2記事もひっぱって、当たり前の結論で申し訳ないですが、今はその基本が見えにくくなってしまっているように思います。
シンプルな簡易シェルターであったものが、その場所に根付いていく中で、快適性を求めるようになってきた。本来光が入るとか風が通るとかということは、守るという視点からは相容れないものであったはず。安全は確保できたから、再び自然の快適な部分を再現しようとしているということなのでしょう。例えば、閉鎖的な縄文時代の竪穴住居から、柱と建具しかない平安の寝殿造になっていくように。

寝殿造、蔀戸(しとみど)はあるけどフルオープンですもんね。

(画像はこちらからお借りしました)
いや、外周に塀をつくって安全な庭が確保されているからこの形ができるのか。

 

話が逸れそうなので戻ります(笑)。
そのようなオープンなつくりを基本として(日本は)きたけれど、それでは寒すぎるということで昨今は高気密高断熱がもてはやされています。でも私は、高気密高断熱は少し行きすぎと思っています。もちろん、エネルギー消費の視点をとれば断熱性能は高いほうがいいし、北方型の思想なのだという話も伺ったことがあり、納得はできます。しかし、まず個人的には閉所恐怖症なので、あのキュっと閉まる密閉感が厳しい。エアコンも苦手です。人間は、変化に五感を研ぎ澄ませて、成長・工夫をしてきたはずなのに、一定であることが快適であるというのは、幻想なのではないかと。オール電化で高性能エアコンで売電してZEHというのは、搾取の構図です(断言)。その土地土地にある資源を生かした、もう少し地に足の着いた解決策があるはず。「ホドホドの(断熱気密)性能」は、言うほど簡単ではないことは理解していますが、そのあたりの形を模索してみたいとおもいます。

もちろん、今の生活にある程度マッチした性能さは確保したいですよね。
軟弱な現代人ですから、あんまり寒いのはツライ。
お風呂場で、死んじゃうのも困る。
結露もやだな。
夏は日差しを遮って、冬は日差しが入って、風を抜く工夫ができるといいな。
実は、どこまでも家の性能に頼るのではなくて、自分のくらし方が問われている部分でもあります。

 

今どきの便利さもあきらめず、縄文の火を焚く楽しさも思い出しつつ。

「身のほどの、シェルター」をつくろう。

まずはそこから、はじめたいと思います。

 

 

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