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Landschaft

【ソマミチツアー2017・後編】木を活かすしくみをつくる。

公開日:2017-11-28 カテゴリー:信州, 林業 タグ:

ソマミチツアー2017。
山から街まで、ぐぐっと濃縮して楽しんだ2日間のレポート・後編をお届けします!

一晩明けて、2日めの朝。
山の中腹にある茜宿さんですから、とても冷え込みました。

朝焼けの西山に沈んでいく満月は、とても幻想的でした。

朝一番のプログラムは、ソマミチ代表原薫さんによる朝ヨーガ。
林業会社の社長でありながら、ヨーガのインストラクターの資格もお持ちです。

前日かなり夜更かししましたが、たくさんの方が参加くださいました。ああ最近、自分の体と向き合ってないかも…などと思うとても豊かな時間。暖かい季節には、森の中で朝ヨーガしたいですね。

朝食を食べたら、田中製材所さんからスタートです!

ソマミチメンバーの田中製材所常務・田中英光さんより製材についてのお話。

昨日ヤマトが引いた材を、イベントの合間を縫って4tトラックで運んでくださいました。今日はそれを製材していきます。


今回の材木の一番玉(一番根に近い部分)は、atelier m4 の前田さんが家具に使うことになり、家具ならではの製材の考え方をお話くださいました。この写真、林業・製材・家具のプロフェッショナルの3ショット。ソマミチではあたりまえの光景ですが、一般的には、製材された板を買うだけの家具作家さんも多いのだとか。

 

機械始動前に、中まで入ってみました。参加者さんの後ろの「安全」と書いてある機械が製材機です。

ふたを開けてみると、大きな輪になったノコギリの刃が入っています。帯鋸(おびのこ)といいます。

この大きな帯鋸を回転させ、製材していきます。

この帯鋸は、毎日目立てに出すのだとか!そんな一つ一つに、みなさん感心してくださいます。学校の教員をされている参加者さんもいて、子どもたちにどんなふうに伝えることができるか、熱心に考えてらっしゃいました。

製材担当は、田中製材所の若き工場長。

機械を始動させると、大きな音がして、みなさんびっくりされたよう。オペーレーターが材木と共に台車に乗って、前に進んでいくことで、鋸刃が入っていきます。

切れました!

音が大きかったので、みなさん楽しめたかなと心配になりましたが、最後のアンケートで製材が面白かったと書かれる方も多く、やっぱり実体験することの大切さを実感。写真で見るのと実際に見るのでは大きく違いますよね。

大きな音に耳をふさいでいた2歳のMちゃんも、製材されたカラマツを触っています。
昨日のおうまさんが引いていた木だよ。

製材された板を、パズルのように丸太に戻してみました。
当たり前…なんだけど、なんだか感動。「おー」と声が上がります。

atelier m4 の前田さんが、テーブルのサンプルをお持ちくださいました。


山に生えていた木が、丸太から製材されて、洗練された家具になる。こちらも知識としては当たり前のことですが、2日間かけてそのプロセスを体験してきたみなさんは、また感慨もひとしおの様子。

地元のアカマツ、しかもブルーステイン材でギターをつくっている参加者さんもいて、色々な木材利用について話が弾みます。

アオの部分には着色をしているそうですが、かっこいいですね!

 

続いてT&Tパネルの施工体験です。事務所前の手すり部分に施工していきます。before写真がこちら。

最初に、林友ハウス工業の森さんより、T&Tパネルの説明。

T&Tパネルは、ソマミチメンバーの林友ハウス工業さんが開発した、信州カラマツの外壁材です。反りが出やすいといわれるカラマツですが、最新の乾燥技術と新しい形状、施工方法を組み合わせる事によってそれを克服。特許取得済みの新しい木壁材です。木裏木表を交互に使い中心に釘を打つことで、反りを抑制します。


(イラストは林友ハウス工業さんサイトより)

この二種類の板材の断面がTとTだから、T&Tパネルというのですね。美しく高性能で、長期的に見れば経済性もあり、地域材の有効利用にもなることから、採用例が広がっているそう。新建材のサイディングが多くなってしまっている街なみを、ここから変えたいですね!

 

まず、試し打ち。カラマツは硬い材であることを体感してもらいます。小学生Tくんが挑戦です。

写真右側は、ソマミチメンバーのクラシック一級建築士事務所・山本さん。Tくんと男性部屋で一晩を共に過ごしたみなさんは、なんだか深い絆が生まれているようです(笑)。

 

材には、下穴を開けてあります。下側の板を先に等間隔に張り、その間に上側の板を張っていきます。

最年少Mちゃんもお父さんと一緒に釘うちに挑戦。

「あー、曲がったぁ~!」「ほら、ちゃんと押さえないから~!」 と、みなさん和気あいあいです。

「うちの外壁の一部もDIYしてみたい。T&Tパネル、買えますか?」との声も。
前日のグリーンウッドワークと合わせて、ものづくりの楽しさを感じていただけたようです。

完成間近!Tくん大活躍です。

完成しましたー!ということで、記念写真。

地域材の有効利用、などといっても、頭の中で考えがち。今回はそれを実際に施工してみて、「手の中の素材として捉えることができた」というご意見もいただきました。

お昼は、地元のみなさんに人気のお蕎麦屋さん、白山さん。(駐車場の兼ね合いでご迷惑お掛けしました…。)信州ならではの、新そばの十割そば。県外からの参加者さんにもお楽しみいただけたようでよかったです。この店内の雰囲気もおもしろい!

山盛りの天ぷらも食べて満腹ですが、午後はカラマツを使った住宅の見学です!
ソマミチメンバー、山の辺建築設計事務所・宮坂直志さんの自邸兼事務所です。

宮坂さんご本人からご説明いただきます。
数キロ先の山から間伐したカラマツを、構造から外壁、内装、サッシや下地に至るまで、徹底的に使い尽くした家です。木質断熱材で高気密高断熱化(Ua値0.38)した、省エネ住宅でもあります。山から街までのつながりを、まさに形にした事例に、参加者のみなさんも興味しんしん。具体的な住み心地やメンテナンスに対する質問があがりました。

建築家の宮坂さんが、「山を基準に考える」と言ったのがとても印象的でした。逆に、林業家である香山さんは、「家でどう使われるかが大事だ」と言います。そんな関係がつくられているのが、まさにソマミチの真骨頂。

事務所部分の壁は、カラマツのへぎ板。木曽の職人さんの手によるものなのだとか。

最後にご感想をいただきました。

ご感想の一部です:

・ソマミチの取り組みがとても分かり易く体験できるツアーだった。

 

・山から切り出した木を製材し、家具や家になるというストーリーを、一部実際に体験をしながらコンパクトに知ることが出来て、楽しく非常に貴重な体験が出来た

 

・申し込みをしてからずっと楽しみにしていたが、期待通り2日間わくわくと過ごすことが出来た

 

・たくさんの気づきがあり、とても貴重な経験をさせていただいた

 

・林業、製材、木工、全ての工程で得られるもの以上の価値があった

 

・ソマミチは、全ての工程それぞれの役割が切れることなく繋がる為に必要なことと思い、共感している

 

・もっと暮らしの中に木や木材が使われる様になって欲しいし、山側からもそういう仕組みやきっかけをもっと探索、提供していきたいと思う

参加者のみなさんも、設計や木工に携わる方、教育に携わる方など、これからのソマミチをサポートしていってくださるだろう方たち。そんなみなさんと共に時間を過ごせたことが、何よりも素敵なことでした。(しまった、最後に集合写真を撮るのを忘れました!)
そして、山に入って、馬を見て、体験をして、製材を見て、温泉に入って、建築を見て…こんな多様な体験のすべてを30分圏内で体験できる松本。身近にあるから見過ごしてしまっている地元の魅力にも、もっと目を向けて生きたいですね。

ソマミチの使命である「木を使う社会の仕組みをつくる」ということ。森からの恵みを顔の見える健全な経済で回していくことにより、自然と人とが織りなす風景がつくられていく。そしてそのプロセスの中で、私たちは「木から学ぶ美しく潔い生き方」に気が付くことができるのでしょう。

そんな風に感じたソマミチツアー2017でした。
参加者のみなさん、スタッフのみなさん、ありがとうございました!

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